カウンセリング

2011年6月30日 (木)

内閣府ゲートキーパー養成研修

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 ゲートキーパーとは、悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る人のことです。人とコミュニケーションする様々な職種の方々がゲートキーパーとして活動することで、うつの早期発見や自死予防対策が進むと考えられています。

 国は自殺総合対策大綱(H19)の中で地域でのゲートキーパーの役割をになう人材養成を目標に掲げていましたが、今年内閣府によりゲートキーパー養成研修用テキストとロールプレイDVDが作成され、自治体などで研修が開始されています。私も伊豆の国市・伊豆市で講師をさせていただいています。

 リンク先からテキストをダウンロードできます。また、自治体の健康増進課や福祉課などに研修についてお問い合わせください。住民の多くの方々が気づきや傾聴について学んでいくことでメンタルヘルス優良地域が達成できると期待しています。

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2011年3月16日 (水)

傾聴の技法⑥ お仕舞い

 傾聴の技法の最後はその終わらせ方です。話を聴くことができる時間の余裕があっても、話の内容がとても興味深くても、可哀想になってできるだけ聴いてあげたくなっても、時間無制限というわけにはいきません。

 傾聴にふさわしい時間はその場や相手の状況などで異なります。長ければ良いというわけでは決してありません。相手が疲れたり、話しすぎたことを後悔したりというマイナス面があります。また、最後に「時間が来たからもう終わりね、ハイハイ」という切り上げ方で、傾聴の効果を台無しにしてしまうことがあります。

Closedsign

 無理に話をまとめる必要はありませんが、話題が一区切りついたと思われた時、相手が同じ話題を繰り返し始めた時に、少しずつ傾聴の世界から現実に戻す導きをしていきます。その時に大事なのは、傾聴はこれで終わりなのではなく、今後も続いていくというメッセージです。たとえば、具体的に次の面談日を設定したり、相談窓口やメールアドレスを教え、「つらい時や心配事があればひとりで悩まずにご相談ください」と伝えます。話が長くなるのはこの機会にすべてを話しきってしまおうという気持ちの表れです。これからサポートが続き、今までと違って一人ぼっちではないという安心感が「時間」よりも欲しいのです。

 「これは終わりじゃない。終わりの始まりでもない。始まりの終わりなんだよ」 (三谷幸喜『ラジオの時間』より)

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2011年3月 8日 (火)

傾聴の技法⑤ スローペース

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 コミュニケーションをキャッチボールに例えれば、返球は相手がとりやすいようにゆっくりと投げるようにします。話を聴くときの相づち・返事・質問などのリズム、話題の展開、口調や動作などははやる気持ちを抑えてスローペースで行います。

 相手が落ち着かない調子や興奮・混乱があれば、無理に話を続けない方が良い場合があります。話を切り上げるのではなく、いったん一息入れてください。たとえば、窓を開けて空気を入れ換える、お茶を入れる、季節や窓外の景色についての話題をふる、などです。

 相手の心情の深い部分を掘り下げる時には一段一段階段を降りるようにしていきます。決して焦らず、好機をとらえて切り込むような質問はしないことです。傾聴では信頼関係が大事で、快刀乱麻で問題を解決するというカリスマ性は必要ありません。

 ボツリボツリ話す相談者でも呼吸は小さく頻回です。受け手側まで同じような呼吸をしてしまうと、「傾聴の場」のリズムがせっかちなものになってしまいます。まず、あなた自身がゆったりと大きな呼吸を意識して行う、これも「スローペース」の技法の一つです。

 「一房の葡萄」の先生は中座する前に、ブドウをもぎって主人公の膝の上に置きます。その後、泣き寝入りして気持ちの混乱が落ち着きます。憧れのスローリズムと言っても良いでしょう。 

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2011年3月 4日 (金)

傾聴の技法④ ホスピタリティ・モード

Hospitalitymode

 ホスピタルの語源はホスピタリティ(おもてなし)と同じです。ところが、私たち医療関係者はプロフェッショナルであろうとすればするほど、患者さんに頼もしさだけでなく、ある種の威圧感を与えてしまいます。特に傾聴の必要な人には・・・。今回の傾聴の技法はホスピタリティ・モードです。

 まずは、ねぎらいと小さな称賛です。相談者にとって他人に話をするというのは想像以上に大きなプレッシャーなのです。こちらが話を聴いてあげるという上から目線でいると、相談者の苦痛や努力を見逃してしまいます。面談後、話ができて良かったという思いと、こんな話をして良かったのかという迷いや後悔がない交ぜになっています。「つらいなかでよく話をしてくださいました」「遠いところから来られてお疲れになったでしょう」という感謝やねぎらいの言葉をかけてみてください。

 次は、心情の推量です。つらい心情をわかろうとする真摯なスタンスと温かい人間性は巧まずして伝わっていくものです。しかし、相手の心がそれに気づけない状況にある場合は、言葉で表現することが必要になります。「どんなにか辛かったでしょうね」「あなたの心情がよく伝わってきました。良ければ、もう少しあなたのお気持ちを聴かせて下さい」などと、相手にわかるようにさりげなく伝える技法です。

 ホスピタリティモードは召使い(主従関係)になることではありません。自分を大切に思うように相手に接することで、相互理解がはかられ、お互いの存在に感謝・満足・感動できる関係性を目指します。

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2011年3月 1日 (火)

傾聴の技法③ 返球の仕方

Catching

 コミュニケーションはキャッチボールによく例えられますが、こちらが反応しなければ壁に向かってボールを投げているのと同じになります。今回はボールの投げ返し方についての技法です。

 まず、賛同と理解。相手の言葉にうなずいたり、賛同の意を表現する。または、内容が理解できたことを伝える、という方法です。賛同の強さの程度に従って、①黙ってうなずく、②「はい」「そうですか」など短い言葉を伴ってうなずく、③「あなたのおっしゃる通りです」「あなたがそう思うのも無理はないことです」などと強めの賛同の言葉をかける、を使い分けます。

 内容の理解と心情の理解は違います。信頼関係ができる前は、相談者は「あなたにそんな簡単に私の心情をわかるはずがない」と心のどこかで思っている場合があります。事実、心情にはその人しかわからない部分が必ずあります。内容の理解には、言外に「私はあなたの心情をすべて理解することはとてもできませんが、あなたがいかに傷ついたかが私なりに理解できました」というメッセージがこめられています。この方法を使えば、誰かにつらい思いをさせられたため、「その人がこの世からいなくなればいい」という激しい言葉を聞いた時に、カウンセラーの心に道義的な気持ちが湧き起こり、後半の部分を修正や否定したくなる衝動を抑えることができます。

Keichodog

 次に、繰り返しと言い換え。相手の言葉の内容やフレーズを自分でかみしめるように繰り返すこと。これはオウム返しではありません。言葉を理解しないで自動的にただ繰り返すだけでは、馬鹿にされていると誤解されても仕方ありません。あくまでも、カウンセラーが相談者の言葉を反芻して深く理解しようとする気持ちの表れです。たとえば、「あなたはそこで不安になった(というのですね)」など。言い換えは同じ言葉でなく、微妙に表現を変えたり、全体を要約したりすることです。たとえば、「何もかも嫌になった、つまり、全てを投げ出したい気持ちになったのですね」など。繰り返しや言い換えの良いところは、相手とともに心情の探査ができることです。自分の言葉でもカウンセラーの表現でも相談者自身が「いや、待てよ。そういうのとはちょっと違うな」という違和感に気づけば、本当の心情にたどり着けるかもしれないのです。

 返球がうまくできないと、相手から「これでは犬に話しかけた方がよほど癒される」と二度と相談されなくなります。

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2011年2月26日 (土)

傾聴の技法② 開かれた質問

 トンチ話の一休さんは、屏風の虎を捕まえなさいという無理難題に、ねじりハチマキたすき掛けの万全な体勢で「さあ、いつでも虎を追い出して下さい」と切り返したそうです。傾聴も相手が話をしてくれなければ始まりません。ただボーッと待っていてもだめです。

Openquest

 そこで相手に口を開かせるための質問をするわけですが、ここで「開かれた質問(open question)」と「閉じられた質問(closed question)」という技法が必要になってきます。

 答えが「はい」「いいえ」のどちらかでよい質問は、あまり考え込まずに答えられるかわりに簡単に話が完結してしまいます。これを「閉じられた質問」と呼びます。例えば「その時、あなたはつらかったですか?」
 一言で答えられる内容も同様です。たとえば、「いつどこで、そう思われたのですか?」

 一方、簡単に答えができず、自分の心を探ってから出さないといけない質問を「開かれた質問」と呼びます。たとえば、「どんなふうに感じましたか?」「どのようなつらさがあったのですか?」自分の思いを引き出しやすく、コミュニケーションを深めるには開かれた質問が役立ちます。しかし、こればかりだと苦痛になります。途中で閉じられた質問をおりまぜて会話を軽く、スピードアップすることで、開かれた質問が生きてきます。 

 逆に、取調べのような質問続きでは相手の心もやがて閉じてしまいます。いち早く気づいて、「開け、ゴマ」とばかり心の扉を開いてもらえるような言葉を投げかけてみてください。

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2011年2月22日 (火)

傾聴の技法① 沈黙は金

 傾聴モードは普段のコミュニケーションをベースにしますが、技法が必要になってきます。もちろん心が無い技法は通用しません。

 まず、「沈黙を恐れない」です。むしろ沈黙を上手に活用します。
 「沈黙は金」「(みんなが押し黙った時に)天使が通った」という肯定的な言葉がありますが、沈黙は誰にとっても気まずいものです。特に、話上手な人は「沈黙は恥」と思ってしまうようです。

 沈黙には意味があります。①プラス:言葉をかみしめている、心を照合している、思い出している、答えを探している。②保留:今はまだ話したくない、言いたいけど言えない。③マイナス:不安・不信・混乱・困惑・反発・抵抗・疲労・飽き。④空白:一区切りつける、頭が真っ白、頭が黙る(思考停止)。⑤故意:沈黙が好き、この程度話せばもう充分でしょ。じらしてやろう、困らせてやろう。⑥その他:別のところに興味が移ってしまった、空想の世界に入った、など。
 今の沈黙がどの種類なのか、或る程度の想像はしていきますが、わからない時に詮索したり考えすぎたりする必要はありません。沈黙が多くてこちらが焦ったり、イライラするようであれば、沈黙を一緒に味わい楽しむようにします。しかし、マイナスの沈黙が続き、相手がいかにも苦しそうであれば、こちらから声をかけて沈黙を終わらせたり、傾聴を早く切り上げたりする必要があります。

Tears

 涙にも色々な意味がありますが、涙を流しているのに気づいたら一度は沈黙します。相手の感情に触れるのを恐れるあまり、つい気づかない振りをしたり、無視して話し続けたりしてしまう傾向の人は意識して沈黙してみると良いでしょう。心を落ち着かせ、沈黙の間、ゆっくりと呼吸しながら「一、二、三・・・」と数えてみてください。だんだんと慣れてきます。

 有島武郎『一房の葡萄』で絵の具を盗んだ主人公を前に教師は見事な対応をします。その一節「先生は少しの間なんとも言わずに、僕の方も向かずに自分の手の爪を見つめていました」と、沈黙を上手に使って、主人公の心が落ち着くのを待つ姿が描かれています。リンク先に朗読音声がありますので是非お聞きください。

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2011年2月18日 (金)

言葉の交差点マナー

Crossing

 傾聴の玄関口で片付けておかないといけないことがまだあります。すでに身についてしまっているコミュニケーションの癖のチェックです。
 これを運転マナーになぞらえて「言葉の交差点マナー」と呼びます。

 まずは①出会い頭事故。自分の言葉が相手の発する言葉といきなりぶつかってしまうことを意味します。交差点に入る前の慎重さがあれば、相手の発語を察知できるものです。もし、ぶつかってしまったら、謝って、相手から話してもらうようにしてください。逆に、相手の言葉をさえぎってでも出ようとする確信犯もあります。これは傾聴する立場として致命的なので、意識して修正しましょう。

 次は②一時停止無視。話す前に、十分な沈黙を確認することが大切です。沈黙が苦手な人が陥りやすい失敗です。

 そして、③アイコンタクト。相手と視線が合った時に、話し出しますよのサインを送ります。これは心だけでも良いのです。心が動けば、口元や身体が無言の合図を送れるからです。

 更に、④譲り合いの精神。あなたが何を話したいかではなく、相手が何を話したいのか、聞いてもらいたいかが優先されます。どうぞお話しください、という余裕を常に持ち、先を急いではいけません。早くゴールに着きたがると、信頼関係を結ぶプロセスが台無しになります。

 傾聴の立場として最悪なのが⑤威嚇クラクションです。なぜか話し出しが相手を否定してしまう言葉になってしまうクセです。「でもね」「いや」「けれど」「と言うか」などです。「あーあっ」 「ちょっとね」 「ええっ!」「うえっ」「う~ん」「れれれ」否定ではなくても、相手が驚いたり、気をくじかれたり、二の足を踏んだりさせてしまう口の開き方は治したほうが良いでしょう。

 学生時代に、私が話した後を必ず「と言うか」で受ける友人がいました。その後に続く言葉は必ずしも私の発言の言い換えや否定ではないのです。また、本人に悪気もありません。でも、なんだか上から目線で話されている感じがするのです。振り返ってみるとつくづく損なクセだと思います。でも、誰でもひとつぐらい自分でも気づかない困ったクセがあるものです。

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2011年2月15日 (火)

傾聴の玄関口

 あなたが傾聴のお家だとして、相手はその玄関口に立つだけですべてを察知して、一歩入るか、それとも退散するか、早い段階で心を決めます。

 だから、傾聴の玄関口はちゃんとしておかなければ始まりません。導入の表看板と言っても良いでしょう。①視線、②表情、③声、④相づち、⑤耳、⑥手、⑦姿勢、⑧衣服、⑨足、⑩物腰、⑪受け入れの雰囲気と心などがあげられます。

Keichoeye

 視線は相手の首もとあたりから、相手の目を見たり、目を細めたり、鉛筆などに落としたり、という風に自然な流れを作ります。記録ばかりに目が入って相手の様子を見ないようでは真剣さや親身になっていることが伝わりません。

 表情はおだやかですが、無表情では無く、ある程度の感情を表現します。相手の目にどう映っているのか、鏡を見て練習しましょう。微笑んでいるつもりでも、そう見えない時があるからです。逆に大げさに喜怒哀楽を表すとからかっているような印象になってしまいます。声もそれにあわせて抑制を効かせた落ち着いた方が良いでしょう。

 相づちは「聞いている、賛同している」ことを表明し、相手の話しやすいリズムを生みます。これもやり過ぎは禁物です。聞き逃して、何度も聞き返したり、「えっ?」と声をあげたりすると、相手は気持ちが萎え、すくみます。腕組みしたり、髪の毛をいじったり、手や足を揺すったり、指やボールペンを鳴らしたり、鉛筆回しをしたり、というのも印象が悪いので、是非傾聴の研修会・勉強会であなたのクセをできるだけ指摘してもらい、治すように努力してください。また、時計にすぐ目をやってしまうのは「早く終わらせたい」、腕組みは「あなたを受け入れたくない」、という潜在意識の表現になります。玄関口は良くも悪くもあなたの心を反映してしまいます。

 あなたが「よくいらっしゃいました。緊張しないで、ご自分のペースでお話をしてください。私はあなたを全面的に受け入れますよ」という傾聴モードになっていれば、自然と玄関口もきちんと整えられるはずです。

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2011年2月12日 (土)

傾聴の場づくり

 傾聴はどこでもできますが、できれば傾聴にふさわしい場所があると良いでしょう。たとえば、職場で上司が部下の悩みを聞くのに、みんなが聞こえるところで「最近、どうした?」などと声をかけても、プライバシーが守れない場所では心を開いてくれません。それどころか、デリカシーの無さに二度と話をしてくれることはないでしょう。

Keichoba

 まず、他人に聞かれない安心感が確保されていることが条件になります。しかし、閉塞感がありすぎると相談者はリラックスできなくなります。参考までに私の診察室の写真を例にあげます。

 相手との距離は相手が自分で椅子を動かして調節できるようにしておきます。机をはさんで対面すると取り調べのようになるため、机の角を挟んで座るか、写真のように机の一辺に並ぶ形が安定します。相手は机や壁面に近い方が落ち着いて話ができます。

 相談中に時計をチラチラ見てしまうクセのある人は真剣味に欠けると思われてしまいます。そこで、相手から視線をはずさずに時間を確かめられるよう、相手の後ろに時計を置いた方が良いでしょう。

 傾聴の場は相手が話をする気になるだけでなく、あなたが傾聴モードになりやすい場所でもあります。ですから、名状しがたい雰囲気というものが場づくりにとって何よりも大切になってきます。

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