朗読

2010年2月14日 (日)

童話「泣き虫カバ先生」

童話「泣き虫カバ先生」

 今回はオリジナル童話「泣き虫カバ先生」をお送りします。泣き虫のカバのお医者さんはあることをきっかけに涙が止まらなくなってしまいます。製薬会社のキツネは効果のある新薬をすすめます。さて、カバ先生はどうなるのでしょうか?笑いあり、涙あり、前向きになるステキな童話です。ぜひお聞きくださいね。

 キツネはキツネなりにカバ先生のことを心配しているようです。でも、薬では本当には良くなりません。まるで、不思議な国でアリスの体を大きくしたり小さくしたりする食べ物のように、「帯に短しタスキに長し」中途半端なコントロールしかできません。しかし、最終的にカバ先生は自然と改善に導かれます。

 泣き虫は決して欠点ではなく、カバ先生の特徴なのです。そして、涙が止まらなくなったこともカバ先生が成長するきっかけとなる天からのプレゼントでした。キツネはそんなこととは知らず、キツネらしい物の見方でハッピーエンドを見つめて喜んでいます。

 でも、カバ先生にとってキツネは天の使者かもしれません。七転八倒したおかげでゴールにたどりつけたのですから。世の中のすべてに意味と役割があると考えると、腹の立つことも少なくなるものです。

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2010年1月28日 (木)

新美南吉「ごん狐」

「ごん狐」

 今回の朗読音声は新美南吉の「ごん狐」。言わずと知れた名作ですが、これまで朗読するのを躊躇していました。いたずらものの子狐のごんが、兵十の網から魚を逃がしてしまいます。後日、兵十の母親の葬式を目の当たりにしたごんは、その魚が病床の母親のためのものだったに違いないと後悔します。動物と人間、決して折り合うことができない関係の中で、あたたかな思いが交錯するところに救いがあると気づき、朗読する気持ちになりました。

 考えてみると、これは「ボタンのかけ違い」の話です。悪人は出てこないのに不幸な結果になり、「どうして?」という気持ちになります。また、「どうしたら不幸な結果を避けられるのだろうか」と考える読み手もいるでしょう。社会で起こる争いの多くはこうした「ボタンのかけ違い」が原因です。「ごん狐」は子供たちに「思いやり」の大切さと同時に、世界を幸福に導くための「思慮深さ」「智恵」の必要性を教えてくれます。

 ごんを人間の子供に重ねてみると、多動症的な要素が多くあります。神話や童話ではこのような性格の登場人物(トリックスター)が物語の狂言回しになりますが、「ごん狐」ではその死によってもたらせる悲しみが大きなテーマとなっています。多動症をはじめとする発達障害のお子さんが傷つけられないような社会をつくる、という今日的な課題にもつながってくると思います。

 ナレーションの声と前後の音楽を「蜘蛛の糸」と同じにしてみました。ぜひ聞いてみてくださいね。音楽は著作権フリー(SAM free musicさんTAM music factoryさん)のものを使用しています。

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2010年1月 9日 (土)

アル&ピーウィー「ボタンのかけ違いの巻」

「ボタンのかけ違いの巻」
 今回は朗読というより掛け合い漫才のようなもの。面白くってためになるアル&ピーウィーのオリジナルシリーズ第一弾をお送りします。アメリカのTVショー風に笑い声も入れています。リズム感を損なわないように二つの異なる声を使い分けながら一気に通しで録音しました。 ピーウィーのメッセージは単純でいて深いんですが、とりあえず楽しんで聞いてください!動物の鳴き声風の音をアレンジした音楽はSoundsnap.comからdownloadしたギャグミュージックです。

 ボタンの掛け違い現象は家族・友人・職場内の個人の間で起こったり、社会(職場・学校)と個人、団体同士などの間で起こったりします。また、同じ個人の理想と現実の間でも起こり得ます。不登校や職場不適応や家庭不和など、いずれの場合でも当初はその掛け違いに気付かずに何とかやりとりが成立しているように見えますが、結局は破綻してしまいます。

 ピーウィーの言いたいのは、一件整合性のある行為でも実はめざすべきゴールから離れてしまっていることがある、その時には「ボタンの掛け違い」に気付くことが唯一ゴールに近づく方法であり、更に面倒くさがらずにもう一度やり直す行動に出れば本当の道にたどりつくチャンスがある、ということだろうと思います。

 もう一つ、注目すべきはアルとピーウィーの間に生ずる「ボタンの掛け違い」です。アルとピーウィーは全く違う価値観・世界観を持っています。でも一生懸命にコミュニケーションをとろうとするのです。このようにボタンの系列とボタン穴の系列という全く違うものがかみ合う時に生ずるリスクと楽しさを理解することが「生きやすい世の中づくり」に欠かせないだろうと思うのです。

 教師と生徒、親と子、医師と患者などの関係を不幸にしないためにはそれぞれが違う物語を持っているという互いの認識が必要です。教師はこうあるべき、生徒はこうあるべき、という固定観念ではボタンの掛け違いがどうしようもなくなるまで進みますが、苦労しながらお互いを理解し一個一個ボタンをはめていく作業ならば効率が悪くても良い結果を生みます。こうした方法はナラティブ(物語)アプローチと呼ばれ、教育・医療・福祉などで少しずつ採用されています。社会全体にこのナラティブというとらえ方が浸透していくことを願っています。

 

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草木虫魚シリーズ「蓑虫」

「蓑虫」
 今回の「艸木虫魚」シリーズは「蓑虫」です。最近は見かけなくなった蓑虫は子供たちにとって不格好であざけりの対象でした。ところが完全に閉じていない 蓑の中から頭を出して振っている姿に作者薄田泣菫は哲学的な思索をめぐらします。なんと蓑虫を詩人に見立てているのです。

 生きていくということは素晴らしいと同時にせつないものです。だから生きることを謳歌し熱狂している人も、その歩みをふと止めて生きていくことのやるせなさ所在なさを感じる瞬間があるものです。その瞬間を否定しないで、じっと味わうことも人生の楽しみであり、遊びなのだよ、と作者は言いたいのだと思います。

 「枕草子」に、蓑虫は鬼の捨て子で、粗末な着物をきせられ「父よ、父よ」と泣く、とあります。昔の人は想像力が豊かです。


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2010年1月 8日 (金)

草木虫魚シリーズ「まんりょう」

「まんりょう」
 今回の「艸木虫魚」シリーズは「まんりょう」です。今回はきわめて短い一遍で、まるで詩のようです。正月の花には欠かせない万両の実は冬の風景にその赤があざやかに浮かびあがっています。作者薄田泣菫が小さな自然にいかに愛情を感じていたことがよく伝わってきます。 

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草木虫魚シリーズ「柚子」

「柚子」
 今回の「艸木虫魚」シリーズは「柚子」です。秋が生んだ子供の中で一風変わった性格の持ち主「柚子」は一般の人からは見向きもされません。しかし、茶人は柚子に「わび・さび」を感じ、柚子味噌を作り上げ茶懐石に利用します。自然を擬人化した表現を楽しんでみてください。

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2009年12月10日 (木)

草木虫魚シリーズ「物の味」

「物の味」

 今回の「艸木虫魚」シリーズは「物の味」をお送りします。江戸時代中期の絵師で、四条派の始祖になった松村呉春が今回の主役です。呉春は貧乏に我慢がなら なくなり、自暴自棄になってしまいます。死の淵から帰還した呉春の最後のセリフに、生きる力、生きる覚悟のようなものが込められています。

 今回も薄田泣菫の名筆が冴えた逸品と なっています。この味をぜひご堪能あれ。

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2009年12月 4日 (金)

草木虫魚シリーズ「仙人と石」

「仙人と石」
 今回の「艸木虫魚」シリーズは「仙人と石」をお送りします。とぼけた味わいと独特なユーモアのある幻想譚ですが、実は哲学的な深~い内容がこめられています。幸せを求めて旅を続ける仙人と、不動のままその環境を受け入れている石との会話が中心です。かみあっているような、でも結局はお互いを理解できずに別れていく姿が印象的です。さまざまな仕事を渡り歩く人と一つの仕事を一生続ける人、チャレンジ精神旺盛な人と安定志向の人、などを象徴しているのかもしれません。それでいて「幸せって何だっけ、何だっけ」という明石家さんまのCMを思わせる軽さで仕上げてあるので、重くなりすぎずイイ感じです。

 高速回線でない場合はケロログのボイスブログにアクセスした方が聞きやすいかもしれません。

 

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2009年11月 7日 (土)

草木虫魚シリーズ「糸瓜」

糸瓜

 今回の朗読も薄田泣菫の「艸木虫魚」から「糸瓜(へちま)」をお送りします。これを聞くとぶらさがっている糸瓜とキリンのオリを見たくなります。登場する医師のM氏の声は、私の尊敬するN医学博士をマネしてみました。糸瓜の姿を眺めてのんびりしようというM氏の気持ち、よくわかります。

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2009年11月 5日 (木)

草木虫魚シリーズ「蜜柑」

「蜜柑」

 今回から名エッセイ「艸木虫魚」シリーズから選んで朗読していきます。これは薄田泣菫(すすきだきゅうきん)が古今東西の気の利いたエピソードを織りまぜながら、優しい眼差しで自然を描写する珠玉の小品集です。第一回目は「蜜柑」。とぼけた味わいがあって楽しめます。

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