今回も「おすすめ絵本」を御紹介しましょう。
「グリーフケア」とは大切な家族や友人を亡くして喪失感におそわれて立ち直れない人のための心のケアです。死などのいずれ迎えなければならない切実な事態をどうやって乗り越えるかを、「わすれられないおくりもの」などの童話はやさしく教えてくれます。
他にマーガレット・ワイルド作、ロン・ブルックス絵「ぶたばあちゃん」(あすなろ書房)があります。死期をさとったぶたばあちゃんが孫娘と過ごす最期の日々を詩情たっぷりに描きます。二人の思い出を確かめ、互いに感謝の気持ちを伝え、これから一人で生きていく孫娘にバトンタッチをすませる、という理想的な人生のしめくくり方を通して、恐怖や絶望だけではない死の有り様を示しています。
そして、ハンス・ウイルヘルム作「ずーっとずっとだいすきだよ」(評論社)は教科書にも載っています。生きている間に「愛している」という気持ちを伝えることで、愛犬との死別を受け入れることができる男の子の姿を描きます。
さて、子供も大人も笑ってしまう童話を紹介しましょう。
アーノルド・ローベル作「ふくろうくん」(文化出版局)はあわて者の「ふくろうくん」のユーモラスでほのぼのとした日常を描いています。その姿を笑いながら、大人や社会が捨て去ってきた視点や価値観に気づかせられます。
同じ作家で「ふたりはともだち」など、仲良しのがまくんとかえるくんを主人公としたシリーズもおすすめ。翻訳者は私の好きな作家の三木卓氏で、言葉づかいが巧みです。
そして、ユージン・トリビザス作 ヘレン・オクセンバリー・絵「3びきのかわいいオオカミ」 (冨山房)は「3匹の子豚」の素敵なパロディー。3匹のかわいい狼にランボー者の悪い大ブタが襲いかかる!大笑いして、最後はハッピーな気持ちにしてくれます。昔、息子の小学校にこの本をたずさえて読み聞かせに行きました。隣どうし顔を見合わせて笑う子、最初から大笑いする子、最後にホッとしてやっと笑顔を見せる子、みんな最後まで引き込まれ、幸せな時間を共有できました。
最後に芸術性の高い絵本。その中から宮沢賢治の作品を御紹介しましょう。まず、中村道雄・絵「よだかの星」(偕成社)。箱根細工のような組木絵が素晴らしい。
そして、小林敏也さんの画本シリーズ(パロル舎)があります。通常のカラー印刷物は、基本色の点でさまざまな色を再現しています。しかし、このシリーズは版画のように、特別な色で一色ずつ印刷する「特色刷り」です。「銀河鉄道の夜」「シグナルとシグナレス」「猫の事務所」など渋いけれど賢治世界の質感を表現して秀逸だと思います。
一生の宝物にできる絵本との出会いがあなたをリラックス法の達人にしてくれるはずです。