文化・芸術

2012年6月 1日 (金)

エッセイ「いのちのカタチ」②

http://fkja.voiceblog.jp/data/relaxdoctor/1337519403.mp3

今回は、福井の情報誌「乗鯨神来」連載エッセイの第二回分を朗読した音声をお送りします。題して「いのちのカタチ~里楽子庵備忘録」です。生命に宿る美についてアレコレ書き綴っています。第二回「山萌えの段」は自然の美を取り上げています。ちなみに里楽子は「リラックス」と読みます。

全体を四つのパートに分けて、順番に「木の項」「祥の項」「点の項」「傑の項」と起承転結の展開を意識しました。祥は目出度い幸運、点は頂点、傑はひときわ優れた人や物を意味します。山の頂点はなんと言っても富士山です。

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「乗鯨神来」はデジタルブックでも読むことができます。最新号15号をぜひご覧下さい。福井ばかりでなく全国の美術館や史跡・観光地の情報が満載です。

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2010年1月22日 (金)

relax052 お茶をする

Ochashitu  中国では座禅の眠気ざましにお茶を飲んだということですが、現代のお茶は癒しのためにあります。仕事もだらだらと続けるのではなく、リフレッシュ時間を入れると効率があがります。お茶の味や香りを楽しみ、楽しい話やお茶請けがあれば一層引き立ちます。お菓子を食べるのがメインになると食べ過ぎてしまうので注意。お茶自体も飲み過ぎはよくありません。お酒と同じで、飲んでも飲まれるな、です。

Ochashitu2  奥熱海療院では伝統的なお茶の世界を気軽に楽しんでいただいています。洋風の療院にはお茶室はあわないのではと心配しましたが日本人はもちろん、外国から訪れた方々もホッとするようです。家庭の中でも自分や家族のために一服立ててみると、生活のリズムが変わります。おてまえということでなく、自分流で茶器や抹茶を揃えてみると、意外なリラックス法になるかもしれません

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2009年6月21日 (日)

relax036 陶芸・書

 高度な趣味に陶芸や書があります。上達まで時間がかかること、技術的に難しいこと、などで敬遠されがちです。しかし、忙しい生活に振り回されている人にとって、他のことを考えずに静かに熱中する時間が生活や心身のリズムを整えてくれます。同時にできあがった作品によって達成感が得られます。ちなみにドイツのベルリン大学CAMセンターには彫刻療法があるそうです。

Toku1  奥熱海療院のお茶室に掲げる御軸を一つ御紹介しましょう。京都紫野大徳寺・徳禅寺 良庵橘宗義(たちばなそうぎ)師(1941~)の真筆です。大徳寺は名僧や名筆で有名な禅寺です。MOA美術館岡田茂吉賞を二度にわたり受賞した画家の千住博氏が襖絵を描いていることでも有名です。
 文字は「徳不孤必有隣」(徳は孤ならず、必ず隣り有り)で、論語の中の言葉です。直接の意味は「道徳は孤独であることはなく、必ず同類を周辺に持つ」、転じて「徳のある人物の周囲には必ず人が寄り集う」と解釈されます。
Toku
 注目すべきは「徳」のくずし字です。温かみのある丸みをおび、見る人によって様々なとらえ方ができる形になっています。私にはお堂で手をあわせて祈っている徳の高いお坊さんの姿に見えます。

 

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2009年3月29日 (日)

relax032 芝居、映画、コンサートに出かける

 芝居、映画、コンサートを観に出かけるというのは手続きがあってしんどいと思われるかもしれません。しかし、慣れてしまえば、そうでもありません。一人で出かけるのも良し、気兼ねがいらない友人と出かけるのも良し。内容は難解で暗いものは避けてください。あくまでもリラックスやリフレッシュが目的です。

Kyakuhon1  芝居というとすぐに思い出すのが1983年3月俳優座劇場で演劇集団「円」の舞台です。別役実氏の「うしろの正面だあれ」という戯曲で、中村伸郎・三谷昇・岸田今日子など性格俳優が出演していました。いわゆる不条理劇ですが、随所に笑いを誘う場面があり、観客席全体が笑いの渦にどんどん巻き込まれる感じでした。

 おそらく、役者も乗っていたのでしょう。乗りすぎて水を吹き出す演技で一列目の観客達にひっかかってしまい、一瞬眼があわてていました。やっぱり特別な出来の日だったと思います。

 でも、テレビでお笑い番組を見ていても、あれほどは笑いません。なんであんなに笑ったのか知りたくて検索した結果、舞台台本を神田古書店で見つけました。

Kyakuhon2  ガリ版刷りのシンプルな台本を読んでいると、忘れていたはずの記憶がはっきりしてきました。すでに故人になった役者さんのセリフまわしや照明や音楽を含めて、その時の舞台が心の中に再現できたのです。大笑いはしませんでしたが、タイムカプセルを開いたときのような感動をもらい、四半世紀前の自分に感謝したくなりました。未来の自分のためにも、このリラックス法はおすすめです。

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2008年12月21日 (日)

relax020 絵本を読む②

 今回も「おすすめ絵本」を御紹介しましょう。
 「グリーフケア」とは大切な家族や友人を亡くして喪失感におそわれて立ち直れない人のための心のケアです。死などのいずれ迎えなければならない切実な事態をどうやって乗り越えるかを、「わすれられないおくりもの」などの童話はやさしく教えてくれます。

 他にマーガレット・ワイルド作、ロン・ブルックス絵「ぶたばあちゃん」(あすなろ書房)があります。死期をさとったぶたばあちゃんが孫娘と過ごす最期の日々を詩情たっぷりに描きます。二人の思い出を確かめ、互いに感謝の気持ちを伝え、これから一人で生きていく孫娘にバトンタッチをすませる、という理想的な人生のしめくくり方を通して、恐怖や絶望だけではない死の有り様を示しています。

 そして、ハンス・ウイルヘルム作「ずーっとずっとだいすきだよ」(評論社)は教科書にも載っています。生きている間に「愛している」という気持ちを伝えることで、愛犬との死別を受け入れることができる男の子の姿を描きます。

Yodakam  さて、子供も大人も笑ってしまう童話を紹介しましょう。
 アーノルド・ローベル作「ふくろうくん」(文化出版局)はあわて者の「ふくろうくん」のユーモラスでほのぼのとした日常を描いています。その姿を笑いながら、大人や社会が捨て去ってきた視点や価値観に気づかせられます。
 同じ作家で「ふたりはともだち」など、仲良しのがまくんとかえるくんを主人公としたシリーズもおすすめ。翻訳者は私の好きな作家の三木卓氏で、言葉づかいが巧みです。

 そして、ユージン・トリビザス作 ヘレン・オクセンバリー・絵「3びきのかわいいオオカミ」 (冨山房)は「3匹の子豚」の素敵なパロディー。3匹のかわいい狼にランボー者の悪い大ブタが襲いかかる!大笑いして、最後はハッピーな気持ちにしてくれます。昔、息子の小学校にこの本をたずさえて読み聞かせに行きました。隣どうし顔を見合わせて笑う子、最初から大笑いする子、最後にホッとしてやっと笑顔を見せる子、みんな最後まで引き込まれ、幸せな時間を共有できました。

 最後に芸術性の高い絵本。その中から宮沢賢治の作品を御紹介しましょう。まず、中村道雄・絵「よだかの星」(偕成社)。箱根細工のような組木絵が素晴らしい。
 そして、小林敏也さんの画本シリーズ(パロル舎)があります。通常のカラー印刷物は、基本色の点でさまざまな色を再現しています。しかし、このシリーズは版画のように、特別な色で一色ずつ印刷する「特色刷り」です。「銀河鉄道の夜」「シグナルとシグナレス」「猫の事務所」など渋いけれど賢治世界の質感を表現して秀逸だと思います。

 一生の宝物にできる絵本との出会いがあなたをリラックス法の達人にしてくれるはずです。

 

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2008年12月16日 (火)

relax020 絵本を読む①

Ehoncorner2  大人になると絵本を読むことはあまりしません。でも、誰の心にも子ども時代に読んだ絵本はなつかしく、印象深く残っているものです。あらためて読み直してみると、自分が成長する過程で見失ってきた純粋でキラキラした部分がよみがえります。また、子どもの反応を見ながら、読み聞かせしたり、絵本の朗読会を開いたりすることもリフレッシュ法の一つになります。 
 さて、ここでおすすめの絵本を二回にわたり御紹介しましょう。まず、林明子・作「こんとあき」(福音館書店)です。「あき」のおもり役としておばあちゃんのところからやって来た、キツネのぬいぐるみの「こん」。あきはこんと遊びながら成長していきますが、ある日古くなったこんの腕がほころんでしまい、修繕のためにおばあちゃんの元に出かけることになります。とてもリアルな質感なのに、これほど柔らかくて温かい絵で表現できるのは林さんだけだと思います。

 次に、斉藤隆介・作、滝平二郎・絵「モチモチの木」(岩崎書店)です。弱虫の豆太が急病の爺さまを助けるために、医者を呼びに一人夜道を走り抜ける。普段は臆病者と笑われてもいい、いざという時に愛する者を守ろうとする行動こそが本当の勇気である、というメッセージが民話的に語られます。切り絵が独特の雰囲気をかもし出しています。

 そして、 スーザン・バーレイ・作「わすれられないおくりもの」(評論社)です。みんなが頼りにし慕ってきたアナグマが亡くなり、その悲しみを受け入れ乗り越える過程を描いています。大事な人はその存在が消えても、縁のある人の心に思い出や交流として息づいている、というグリーフケアに適した内容です。

 写真は私の勤めるクリニックの診察室です。箱枠のような家具を重ねて、展示したい物をいろいろ並べたハートウォーミングコーナーを作っています。癒されます~

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2008年4月23日 (水)

花言葉が聞こえる

 私の勤めるクリニックは建物の外だけでなく、中のあちこちに花が飾られています。

Photo_3  設計の段階で、廊下の壁をくり抜いて飾り棚(ニッチ)を作りました。一般の診療所で何故花を飾らないかというと、長いこと放置された花や水が感染源になってしまう恐れがあるからです。しかし、ここはほぼ毎日のように花を生け換えます。それも全て大仁農場で咲いているか、栽培している花。つまりは農薬や化学肥料を使わず育てた花です。

 花の一番美しい姿を来院者に見てもらいたいと、スタッフやボランティアが朝一番に掃除と花生けを一斉に行います。みんな手慣れたもので、ササッときれいに生けてしまいます。

 お客さんを迎える花を飾るのが玄関ニッチの役目です。最近、ニッチを隙間という意味で使うそうですが、本来は大事なものを安置するくぼみが語源です。たとえば、礼拝堂のマリア像、小鳥の巣などです。だから、決して付け足しや遊びのつもりでニッチを設計図に入れたわけではありません。

 花のリラックス効果を利用する花療法。それをクリニックの建物全体でさりげなくやろうという、大胆な発想です。「いらっしゃいませ」とは言わないけれど、もてなしの心を表しています。

 花は生けた後でも水を吸い、光を浴びて、姿形を変えていきます。生きているんですねー。写真のスイートピーの花言葉は「ほのかな喜び」「優しい思い出」などです。花自身がメッセージを語ってくれるような気がしませんか?

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