若山牧水「比叡山」その2
若山牧水の「比叡山」後半部分です。前半は夜の場面が多く、陰にこもる傾向があるのに対し、後半は陽のイメージが加わっています。宿泊所がなくて困っている牧水に救いの手がさしのべられます。そこで高齢の寺男との出会いがあり、それについて牧水は「山寺」という続編まで作っています。よほど心にしみた出来事であったようです。(案内地図)
この時代の平均余命は40歳前後で、牧水は43歳で亡くなりました。ところが、ここに登場するお年寄りは当時の超高齢者で、一人は酒で身代をつぶし、現在は身寄りのない独居老人です。現代社会の先取りのような一編です。
それでも昔は、お年寄りは長年の智慧や経験を持った長老として尊敬され、実際に地域社会の長としての役割を担っていたと思います。ところが、現代のようなマニュアル社会では、そうした智慧や経験を手取り足取り若者に伝えるシステムが失われてしまいました。お年寄りは余生を自分で勝手に楽しんでよい代わりに、自信や後進からの尊敬の念を得られにくくなっています。
牧水は石川啄木の死を看取り、その後の葬儀もろもろのお世話をしました。そこには友情はもちろんのこと、弱者や敗残者と呼ばれる人々へのやさしいまなざしがあったのだと思います。また、晩年定住した沼津の千本松原を愛し、伐採に反対するような文章を新聞に寄稿しています。そして、次のような歌も詠んでいます。
松原のなかの老木の枯れたるを伐(と)る音きこゆ昨日も今日も
枯れた老木であっても伐採の音がグッと胸にこたえたのかもしれませんね。そんな牧水の「やさしさ」に触れることが、私のリラックス法
の一つなんです。
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