新美南吉「歌時計」
今日の朗読音声は新美南吉の「うた時計」です。うた時計というのはオルゴールのことだそうです。野中のさびしい道を歩く少年に、同じ方向へ向かう男が声をかけます。道々話をしていくうちに、意外にも二人には接点があって‥という内容です。今ではありえない光景で、昭和世代の心をなつかしい郷愁(ノスタルジア)へと誘います。(C)MP3 by Saya Tomoko
豊かに、そして便利になった平成という時代。確かに町には物や音や情報があふれています。それらを欲しがる気持ちを「物ごころ」といいます。私たちは二三歳過ぎる頃に「物ごころ」に憑(つ)かれ、それと葛藤しながら大人へと成長していきます。
でも、物や音や情報は吸収しすぎると内臓脂肪のように自らを傷つける毒になるかもしれない、と感じています。もちろん、必要なものですから、うまくコントロールできれば良いのですが、‥。
簡素なスローライフをすすめると皆さんは「いいねえ。こんな生活をすれば健康になるし、病気なんて治っちゃうんじゃないの」と言葉では言うのですが、でもそれを行う人はあまりいません。おそらく、童話の世界を垣間見たような気分なのだと思います。私も昔は「現実にはありえない生活」と思っていました。そんな生活を続けていると人間だめになるんじゃないかと。でも、そうではなかったのです。
現実に原油の値上げで社会の基盤が揺らぐのを見ると、物ごころをコントロールしているつもりになっているだけで、もう実は後戻りできないぐらい肥大化させてしまっているんじゃないかと心配になります。
「うた時計」の少年の素朴さや純粋さは、現代人にとって「現実にはありえない」もので気恥ずかしささえ感じるでしょうね。でも、それが男の暴走を止めるのです。まるで天使がそのためだけに舞い降りてきたように‥。
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