2009年7月10日 (金)

芥川龍之介「杜子春」その3

 今回は芥川龍之介「杜子春」の最終回です。修行中に魔性のものに殺された杜子春は地獄でもだんまりをきめこみます。怒り心頭に発したエンマ様は畜生道におちている杜子春の両親をムチで叩きまくったのです。息も絶え絶えに母親が語りかける言葉に、思わず杜子春は‥。

 黄金を与えても遊びほうけて使ってしまう杜子春。それも二度、いや親の財産を入れると三度。その杜子春に鉄冠子は小言を一切言わずに「感心にもののわかる若者」とほめています。そして、真面目に働くつもりのない杜子春が仙人の修行を望んだときに、一喝することもせず、取り立ててやる、というのです。かなりの特別待遇です。

 ところが、修行は一転して、これでもかというほど厳しく残酷なものになります。その中で杜子春は或る悟りを得るのです。

 実は黄金を与えてゼイタクをさせ、その後に転落させるという経験自体も仕組まれたものだったのでしょう。鉄冠子の目的が最初から杜子春の成長にあったのだと気付きます。それも頭から説教するのではなく、実体験から学ばせたのです。

Momonohana  エンディングの一連の鉄冠子のセリフがこの作品を名作の域に高めたのだと言えます。鉄冠子がただの酔狂で杜子春に関わったわけではなく、真剣な思いがあったことをうかがわせます。杜子春に対する深い慈愛に満ちた眼差しの理由を、彼が杜子春の家の守護神であったと考えると納得がいきます。杜子春が精神的に成長し、自殺や一家の断絶の恐れがなくなることは鉄冠子にとってこの上もない喜びなのです。

 私は児童用にリライトされた「杜子春」を読んだことを覚えています。人間の顔のついた馬が挿絵になっている地獄の部分は嫌だったのですが、エンディングはお気に入りでした。鉄冠子が杜子春にプレゼントした畑付きの家や桃の花が咲き誇っている桃源郷を想像したものです。杜子春や読者にとって地獄の情景を見た後だからこそ輝いて見えるのだと思います。

 私も杜子春のように色々な苦労や愚かな時代を経験して、大仁瑞泉郷にたどりつきました。だからこそ最高のプレゼントだと感謝しています。

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2009年7月 8日 (水)

芥川龍之介「杜子春」その2

 今回は芥川龍之介「杜子春」その第二回目です。二度までも大金持ちになりながら、ぜいたくな暮らしがやめられず、再び無一文になった杜子春の前にあの老人が現れました。こんどは「仙人になりたい」という杜子春の願い通り、人里離れた山で修行が始まります。

 鉄冠子という仙人が空を飛びながら気持ちよく歌をうたう場面があります。ほとんどの朗読サイトでは詩を読むだけで歌われておらず、無謀かと思いましたが、即興で歌ってみました。クオリティはさて置き雰囲気だけでも味わってください。

 明治の文豪の中でも芥川の作品は今でも読みつがれています。短編が多いこと、文章や構成が巧みで読みやすいこと、誰もが好む幻想奇譚が多いこと、そして、いつの時代にも通じる普遍的な題材を扱っていることなどが理由としてあげられます。特に、この杜子春には近代以後の日本人が抱える個人主義的な不安や虚しさがよく投影されていると思います。

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2009年7月 5日 (日)

芥川龍之介「杜子春」その1

 久しぶりに朗読ファイルをアップしました。芥川龍之介「杜子春」その第一回目です。BGMには二胡の音色が郷愁を誘う楽曲を使い、私にしては時間をかけてていねいに作成しました。無一文になって途方に暮れている杜子春の前に、怪しい老人が現れ、黄金の山のありかを教えてくれます。はたして杜子春の運命は転換できるのでしょうか?

 BGMにふさわしい著作権フリー素材がなかなか無かったのですが、(株)センターラインレコードから著作権つきの二胡の楽曲を見つけ、購入しました。朗読内容にぴったりで満足しています。

 杜子春は昔から好きな物語ですが、なぜ自分で好きなのかがよくわかりませんでした。でも、今回朗読してみてぼんやりとわかってきました。それについては次回以降に譲ることにしましょう。

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2009年6月27日 (土)

relax037 料理をつくる

 男性でもたまに料理を作って、家族や友人に食べてもらうのはストレス解消につながります。もちろん、美味しくなければ意味がありません。時間をかけて上達してから料理人デビューしてください。

 永平寺には修行僧の食事をつくる典座(てんぞ)という役割があります。曹洞宗の開祖・道元禅師は雑事と考えていた食事の用意が大切な修行であることにショックを受けました。そこで「典座教訓」という書物に料理係の作法や心構えをまとめています。

2  まず、第一に食材の尊いいのちへの敬意を忘れないこと、第二に食べる人への思いやり・まごころ・もてなしの気持ちをもつこと、そして第三にとらわれや偏りのない深く大きな態度で作ること、が大切だということです。

 永平寺の典座がゴマ豆腐を作る様子をテレビで見たことがありますが、葛とゴマを時間をかけて、心をこめて練り上げる姿はこうごうしいばかりでした。

 奥熱海療院ではセミナー付きの自然食養生体験ができます。典座ではありませんが、調理師と栄養士が心をこめて料理してくれています。

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2009年6月21日 (日)

relax036 陶芸・書

 高度な趣味に陶芸や書があります。上達まで時間がかかること、技術的に難しいこと、などで敬遠されがちです。しかし、忙しい生活に振り回されている人にとって、他のことを考えずに静かに熱中する時間が生活や心身のリズムを整えてくれます。同時にできあがった作品によって達成感が得られます。ちなみにドイツのベルリン大学CAMセンターには彫刻療法があるそうです。

Toku1  奥熱海療院のお茶室に掲げる御軸を一つ御紹介しましょう。京都紫野大徳寺・徳禅寺 良庵橘宗義(たちばなそうぎ)師(1941~)の真筆です。大徳寺は名僧や名筆で有名な禅寺です。MOA美術館岡田茂吉賞を二度にわたり受賞した画家の千住博氏が襖絵を描いていることでも有名です。
 文字は「徳不孤必有隣」(徳は孤ならず、必ず隣り有り)で、論語の中の言葉です。直接の意味は「道徳は孤独であることはなく、必ず同類を周辺に持つ」、転じて「徳のある人物の周囲には必ず人が寄り集う」と解釈されます。
Toku
 注目すべきは「徳」のくずし字です。温かみのある丸みをおび、見る人によって様々なとらえ方ができる形になっています。私にはお堂で手をあわせて祈っている徳の高いお坊さんの姿に見えます。

 

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2009年5月28日 (木)

ディテールに神は宿る

 建築家ミース・ファン・デル・ローエの言葉に「ディテール(細部)に神は宿る」があります。優れた建築作品には人智人力を越えた素晴らしい細部がある、という意味です。

Pinkego  自然の世界にも、そんな感動的なディテールが随所にあります。まずはエゴノキ。特に園芸種ではなく雑木に過ぎませんが、花つきが良く、長い柄を持って垂れ下がる小さな花が一斉に開き、鈴なりになります。写真は移植したピンクの花ですが、クリニック周囲はほとんどが自生のものです。

Koajisai  そして、コアジサイ。もともとクリニック周囲はコアジサイの群生地だったのです。はじめて薄暗い林の中でコアジサイの花を見た時は、妖しい美しさに息をのみました。花だけが青白く浮かんで見えるのです。そして、アジサイは装飾花というニセの花がほとんどであるのに対し、コアジサイにはそれがありません。

Koajisai2  つまり、小さな小さな本物の花が集合しています。小さな花には花びらと長い雄しべ・雌しべがあって、拡大してみると星を細工したかのような美しいディテールを持っています。ぜひルーペを持って見てあげてください。感動すること間違いありません。

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2009年5月22日 (金)

初夏の自然観察セミナー

Shizenkansatukai  二ヶ月に一度、大仁農場にある微生物応用研究所の勝倉研究員にお願いして、療院スタッフに周囲の自然を観察する方法を教えていただいてます。勝倉さんは樹医でもあり、植物に関する質問なら何でも答えてくれます。

 今回は療院の散策路から少し入った林の中に足を踏み入れました。虫やヘビやウルシに注意しながら、勝倉先生につき従って、小さな草木についての話を聞きます。

Hanshozuru  写真はハンショウヅルです。紫の花が火事の時に鳴らす半鐘に似ているクレマチスの仲間です。蔓が他の木にからまって、小さな花がツリー飾りのようにぶら下がっています。花のように見えるのはガクだそうです。

Ginran_2  キンランとギンランという絶滅を危惧されている野生蘭も見ることができます。きれいだからといって家に持ち帰っても、栽培はできません。これは根にある菌や樹木に支えられて生きているからです。写真はギンラン。両方とも守ってあげたいほど可憐な花ですね。

 小さな自然に目を向けてみると、しみじみと何かを語りかけてくれるようで、とても癒されます。

 

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2009年5月18日 (月)

芥川龍之介「蜘蛛の糸」(再録)

携帯ポッドキャストCaspee終了にともない、ファイル保管場所を変更しました。Podcasting Juice新規リスナーのための再録です。解説はリンク先へお願いします。

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2009年5月17日 (日)

relax035 短歌・俳句・詩

 画像ではなく、自分の言葉で世界を切り取ってみる方法が短歌・俳句・詩などです。リラックス法として、日常生活の情景をとらえたスナップ写真のような手軽な短歌をおすすめしています。癒されるだけではなく、物の見方が変わり、生活や人生が豊かになります。

 「スナップ!短歌のすすめ~超入門編」では次の9つのステップを踏んで、短歌によるリラックス法の達人を目指すことができます。(リンク先でWord文書をダウンロードできます)
Tenmado  1)ただごと歌からはじめよう
 2)気持ちを加える
 3)スナップ!する
 4)できあがった歌を清書する
 5)声に出して読む
 6)気に入った歌人の歌を何度も読む
 7)五感を使って自然を観察する
 8)感動や喜びを表現する
 9)新しい言葉と出会う

 天窓の 輝く陽射しに 手を伸ばし 宇宙を触る 車椅子の子

 写真は奥熱海療院を広角レンズで撮影したものです。二階展望台とともに、左右に細長い天窓が見えます。手動開閉式で、暑くなったときに簡単に風を取り込むことができます。

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2009年5月10日 (日)

母の日によせて

 今日の母の日によせて、以前つくった短い詩を掲載します。

 昔、近くに住んでいた娘のお友達が胎児の時のことを記憶していました。お母さんが尋ねると、お腹の中はものすごく快適だったのに、突然すべるように外に押し出されて、最悪な気持ちになった、と言うのです。生まれてしばらく右目が見えなかった、と言うので、お母さんも記憶をたどってみると、確かに胎脂が右のまぶたを塞いでいたことを思い出したそうです。

 そこで私の二歳になる娘に尋ねてみると、しばらく首をかしげて考えてから、「そんな昔のこと忘れちゃったわ」とニコッと笑って答えました。

 もちろん、あとで作られた記憶かもしれませんが、胎内環境を良くするために、お母さんが語りかけたり、音楽を流したり、怒らないようにしたり、という胎教は有効だと思いたいですね。

 「生まれなければ良かった」と言って泣く人がいます。「生まれなくていい人はいないんですよ」と語りかけても納得できるものではありません。そんな風に思えれば悩みを打ち明けたりはしませんから。でも、いつかこの詩のような実感が得られればいいな、と祈っています。では、すべての人に「母の日、ありがとう。おめでとう。」

Hahanohi

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2009年5月 5日 (火)

初夏のお散歩コース

 

Kasenjiki2  休みの日に愛犬そらとともに長目の散歩に出かけました。
 Kasenjiki

 まずは川沿いの道をてくてく。数年前から建ち始めた新しい家々は洋風建築が多く、庭の花壇やシンボルツリーが目を楽しませてくれます。




Wakaremichi  さて暑くてバテないように、次は里山の森林に入っていきます。木漏れ日を歩いていると、分かれ道にさしかかりました。

Shokanokiridooshi  左の道を選んで進んで行くと、切り通したトンネルのような道になりました。「となりのトトロ」に会いに行けそうな雰囲気があります。


Ishidatami  さて、森を抜けると、ふたたび川に合流します。ここは人家が少なく、川を覗いてみると石畳が続いていて、人里離れた秘境の温泉にでも来たような錯覚にとらわれます。流れを見ているだけで涼やかで、初夏のお散歩コースにぴったりです。そらも大満足、私もいい運動になって大満足です。

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エニシダまつりだっ!わっしょい、わっしょい

 我が家のエニシダが二本とも花盛りとなりました。二年前には30cmほどだったのに、今は私の身長を超えてしまいました。いくらカットしても強健で花をめいっぱいに咲かせます。

Enishida1  一本は裏庭の私の一坪の実験農場に植えたもので、黄色が強く、家人や隣人から「お祭りみたいだね」と言われます。実は今年3月、すぐ近くに三十坪の畑を借りたので、実験農場は妻の手に譲り渡されたのです。今はハーブやミニトマトが栽培されています。新しい畑はまだ開墾中です。

Enishida2  もう一本のエニシダは玄関横の庭にありクリーム色の花が咲き誇っています。近くにアジサイ、ミヤギノハギ、コデマリ、銀マサキ、サルスベリ、コニファー、ナルコユリなどが重なって植わっているため、花後に強い剪定をする予定です。

 

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